生まれた愛




「私もお母さんは本当のお母さんじゃないけど
一応両親って言えるからさ
でもお母さんもお父さんもいないなんて、絶対にやだよね」




千尋がそう言って暗い表情を浮かべた





千尋のお腹の中には千尋の子がいる





でも




翔はいない






もう父親がいないことが決まっているも同然だった




だから千尋の今の言葉の意味がすごく重く伝わってしまう




「どんな事情があるのかわかんないけどな
でもそれを隠そうとしないし堂々としてる結衣ってすごいよな」



「昔は辛かったと思うよ?」



「そうだよなーー
明るいなあいつ」





今まで何度も言ってきたけど



何度も思う




あいつはただのバカじゃない




人として尊敬出来るくらい結衣が輝いて見えている






「人って大事だよね
私も死にかけたことあるしさ」



千尋が思い出を振り返っているのか上を向いて話していた




「そうなの?」



俺が聞くと



「はあ!?覚えてないの?」



「?????」



なんのことかわからない




「まあーなんかすごい泣いてたしね空
あの時はほんと嬉しかったなー」



あの時っていつだろう



そこまで昔の話ではないと思うが



いつだろう




めっちゃ大事なことのような気がする




















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