生まれた愛




千尋のお父さんも少し下を向いて



「信用出来ねーな」



と、一言言った




翔もそれを承知で言ったはずだ




そして




溜めていた涙を流した千尋は立ち上がり




翔の方へ近づいた





「何で今更そんなこと言うの?」




千尋は未だ涙を止めず



「じゃあ離れる前にもっと話し合える時間を作って欲しかったよ
離れてから気づいちゃ遅い
離れる前にもっと本当の気持ちを聞かせてよ」




千尋が言うと翔も涙を流す



「ごめん、もっと早く気づけばよかった
もっと早く千尋のお父さんにこうやってけじめつけとけばよかった……
後悔しかしてないよ」



翔は千尋の目を見て言う





そして千尋のお父さんも立ち上がって翔に近づく




「まだ高校生だからな
わからないことはたくさんある
けど、責任取れない人間は高校生でもクズ人間だよ
責任とるのに早いに越したことはない
……けど、遅くてもその責任が取れるなら
取っといた方が良いよ
今後君がどうなりたいかが問題だからね」




千尋のお父さんはさっきとは裏腹に少し優しく言う





「はい、借金返せるように働き続けて
それでもたまに千尋と会えるなら会いたいですし
子供にも会いたい……」



「……千尋はどうしたい?」



千尋のお父さんは千尋に優しく言うと



千尋は泣きながら答えた






「私も離れてる期間
翔の事しか考えてなかったよ
戻って来てくれるなら一緒に居たいし
今後会ってくれるなら会いたいし
その言葉に嘘がないなら
“私は信じていたい”
離れてる間、ずっと信じてたんだもん
ここまで来てくれた理由がそれなら翔を信じるよ」







千尋の本当の気持ちを言うと




翔は一気に崩れ落ちるように




泣き出した





「ありがとう……」




翔はそう言って千尋の肩に手を置く








その瞬間だった








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