総長が求めた光 ~Ⅲ神と獣~【完】
『死ねよ』
シンが呟いたのが、やけに鮮明に聞こえた。
ヤミが俯き、シンが楽しそうに嗤う。
姉貴を連れてきた男が、姉貴に近づく。
姉貴はまるで、人形のように何の感情も顔には出さず、一歩一歩ゆっくり俺達に近づく。
それでも、距離はなかなか縮まらない。
男の手に光るソレが、視界の隅に見えた。
‥‥止めてくれ‥‥‥。
止めてくれ‥‥やめてくれ‥‥ヤメテクレっ。
心では、たくさん叫ぶのに体が動かない。
助けたいと願うのに、心のどこかで「弟(自分)を見てくれない姉を、どうして今更助ける必要がある?」そう囁く悪魔に振り向いてしまったんだ。
姉貴の体から生まれた真っ赤な羽が、姉貴を飛ばすことなく地面に落ちて行った。