総長が求めた光 ~Ⅲ神と獣~【完】

『死ねよ』


シンが呟いたのが、やけに鮮明に聞こえた。


ヤミが俯き、シンが楽しそうに嗤う。


姉貴を連れてきた男が、姉貴に近づく。


姉貴はまるで、人形のように何の感情も顔には出さず、一歩一歩ゆっくり俺達に近づく。


それでも、距離はなかなか縮まらない。


男の手に光るソレが、視界の隅に見えた。


‥‥止めてくれ‥‥‥。


止めてくれ‥‥やめてくれ‥‥ヤメテクレっ。


心では、たくさん叫ぶのに体が動かない。


助けたいと願うのに、心のどこかで「弟(自分)を見てくれない姉を、どうして今更助ける必要がある?」そう囁く悪魔に振り向いてしまったんだ。






姉貴の体から生まれた真っ赤な羽が、姉貴を飛ばすことなく地面に落ちて行った。






< 252 / 373 >

この作品をシェア

pagetop