総長が求めた光 ~Ⅲ神と獣~【完】
その瞳は、今何を映しているのだろうか。


やっぱり、目の前にいるシンを映しているのだろうか。


それとも、シンを通してどこか違うところ‥‥ものを見ているのだろうか。


「あ‥‥ヒ‥‥サっ」


あたしは、ヒサの名前を呼ぶだけで精一杯だった。


小さく、小さく愛しい人の名を呼んだ。


こんなにも、こんなにも愛しい人の名を呼ぶことが"怖い"と感じたのは初めてだった。


どうしてこわいと思ったのかは、あたし自信よくわからない。


だけど、名前を呼ぶたび、こみ上げてくるのは計り知れない不安。


何度も助けたいと思った、シンの名前は一度も呼ばなかった。


あたしの手を優しく握り、あたしに安心を送り込んでくれるヤミ。


あなたは、一体どっちの見方なの?


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