総長が求めた光 ~Ⅲ神と獣~【完】
ツーと口の端から流れる血を手の甲で拭いながら、視線はヒサを捉えて外さないシン。


「しっぽ巻いて逃げるか」


その言葉が遂にヒサを怒らせた。


「じゃあ、俺が勝ったら俺の望むもん全部出せ」


「意外と強欲だな。しかも"返せ"じゃないんだな。まぁ、それもそうか。もともとお前は何も持ってなかったんだしな」


「神なんだろ?望み、叶えられるんじゃねぇのかよ」


「神にも願いを選ぶ権利くらいあるんだよ」


さっきよりも少しだけ、ヒサの目が開いた。


そして、その顔つきが段々シンと似てくる。


それは、お互いが共通する顔。


不良の族の顔だった。


あたしは、ヒサのこんな顔を見たことがない。


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