総長が求めた光 ~Ⅲ神と獣~【完】
「俺だ。あぁ?そんなもんはとっくに終わってる。サツここによこせ」


短い言葉だけを交わし、切られた電話。


シンに背を向けて、まっすぐあたしの元まで歩いてくれる。


それだけで、言い知れぬ思いがあたしの中に溢れてく。


「行っておいで」


ヤミに背中を押され、少しよろけながらも一歩、また一歩と距離を縮めてく。


あと‥‥‥一歩だった。


あと少しで、あたしはあなたに触れることができたのに‥‥‥。


それができなくなるかもしれないと、予知できたのは1秒前。


ヒサの後ろに見えた鬼の顔。


それは、本当に一瞬のことだった。


あたしが差し出した手に触れることなくすれ違うヒサの手。


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