赤色の恋 <短編>
(『もしもし。どうした?』)
あの優しい声…。
『ごめん…。』
(『何かあったんやったら言えよ。』)
『怜奈に…だまされた。』
(『何をだまされたん?』)
『井上が、うちが井上に何回もコクったとか皆に言いふらしてるとか、言われてん。』
(『それで?』)
『怜奈の言うこと、信じた…』
(『ふーん。…俺としては‥信じてほしかった。』)
『えっ?』
(『ううん。何もない。』)
『ごめん…。』
普段は強がってばかりで、『ごめん』ってコトバをあんまり出さないあたしが、謝った。
自分でもびっくりした。
(『そっか。じゃあ…』)
―プーップーッ―
電話を切った。
それだけ?って思ったけど、それが、井上なりの優しさやったんかな。