銀棺の一角獣
「アルティナ様。こちらへどうぞ」


 スウェインはアルティナを部屋の中央に導いた。アルティナは初めて気がついた。床に何か描かれている。


「その円の中央に」


 アルティナは指示された場所に立った。床を眺めていると、自分が部屋の中央というだけでなく、模様の中央に立っていることがわかる。


「こうでいいかしら」

「よろしゅうございます」


 スウェインは微笑んだ。その微笑みが死んだ父親と重なって、アルティナの胸が痛む。


「……これから何をするの?」

「気をお楽に。あとは全てわたしにおまかせください」


 アルティナは頷く。スウェインにまかせることしかできない。これから先、何をしたらいいのか知らないのだから。

 スウェインはアルティナの周囲に銀色の砂をまいていく――床の上に刻まれている模様をなぞるかのように。


「……それでは始めます。準備はよろしいですか?」


 こくりと無言のままアルティナは頷いた。
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