銀棺の一角獣
 予定されていた時期よりも前にアルティナが封印を解いてしまったこともその中には含まれていた。

 予定より早く封印を解いてしまったことが、どう影響するのだろう。震える手で胸を押さえつける。


「お待たせいたしました」


 スウェインが香りの高いお茶を運んでくる。煎じられた何種類もの薬草が、複雑な香りを漂わせる。


「……ずいぶん甘いのね」


 薬草茶にはたっぷりの蜂蜜が混ぜられていた。少々甘ったるく感じられるほどだ。けれど、複雑な香りと甘さが記憶を受け継いだばかりの疲れを飛ばしてくれるようで、アルティナは残さず飲み干した。

「蜂蜜を入れないと、苦くて飲めたものではありませんよ。アルティナ様」


 小さく笑ってスウェインは返す。彼はアルティナがカップを空にするのを待って、それを取り上げた。


「それでは戻りましょうか」


 再びスウェインが先に立って、アルティナを外へと導く。神殿の中は誰もいないように静かだった。
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