銀棺の一角獣
「アルティナ様」


 扉の外からかけられた声に、アルティナは窓から振り返った。行けというようにティレルは首を動かす。

 その仕草に力づけられたように、アルティナは扉へと寄った。


「明日のことですが――早朝の出立でよろしいですか?」

「かまわないわ。まず都へ……それから、リンドロウムの森へ向かうわ。キーラン様にも一緒に来てくださるように、改めてお願いするつもり」

「アルティナ様の願いでしたら、あの方は断らないでしょう」


 扉の向こう側で、ルドヴィクが微笑む気配がした。アルティナは扉に額を押しつける。開けることができればいいのに。


「それでは、そのように手配しておきます。お休みのところ、失礼いたしました」


 それ以上はどちらも口を開かなかった。ルドヴィクの足音がだんだん遠ざかっていって、やがて聞こえなくなる。それまでアルティナはずっと扉に額を押しつけていた。
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