銀棺の一角獣
 ティレルは、渋々鞍をつけることを受け入れた。

 アルティナは、乗馬は得意ではない。もう一頭馬を用意してそれに彼女が乗るとなると、彼女に合わせてゆっくり進まなければならなくなってしまう。

 早く都に戻らなければならない今、鞍の一つや二つ、我慢できないわけではないと言うティレルの角をアルティナは撫でる。

 昨日の今日で、そうすると彼が喜ぶことを彼女は知っていた。

 とはいえ、それはアルティナ限定である。ルドヴィクやキーランが手を触れようとするとさりげなく避ける。

 強引に触れようとすると、「蹴るぞ」と足を振り上げるのだから。

 神殿の前からの逃走は、彼にとって例外中の例外なのだろう。

 一晩もてなしてくれた村長たちに礼をのべて、アルティナたちは森に入った。それなりのスピードで馬たちは走っていく。
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