銀棺の一角獣
 アルティナは全てティレルに任せていた。手綱すら持たず、鞍に両手をかけているだけだ。


「そういやあいつ」


 自分の右後ろを走っているルドヴィクを長い顔で示して、ティレルは言った。


「あんな奴初めて見た。目線だけで、一瞬にして俺の意図を理解して――こちらが身を屈める前に、背中に飛び乗られるとは思わなかった」

「我が国一の騎士だもの」


 一角獣などと言う存在を、ごく当たり前に受け入れているのは、アルティナにとっては当然のことだった。神殿で千年近く前からの王たちの記憶を受け継いできたのだから。

「あれもなかなか腹が据わっているな」


 ティレルは、今度はキーランを誉めた。

 キーランも当たり前のような顔をして、ティレルの左後ろを走っている。「リンドロウムの森」という地名には何の心当たりもないだろうに、
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