銀棺の一角獣
アルティナの出立はひっそりと行われた。
「お帰りをお待ちしております」
「えぇ――デイン。留守をお願いするわ」
不安をはらんだ目の色を隠せずにいるアルティナに、見送りにきた家臣たちは一様に悲痛な視線を向けた。
ディレイニー王国は、強大だ。国王のライオールは無慈悲な人間だという。ライディーア王国の兵士たちは、彼自ら指揮する軍に歯が立たなかった。
そこへわずかな供だけを連れて、乗り込もうというのだ。若い女性の身で恐ろしくないはずはない。
黒一色に身を包んだアルティナは、今にも倒れてしまいそうに見えた。黒いベールで顔を隠しているから、表情はすぐ側に近づいた者にしかわからない。
ルドヴィクが手を差し出す。その手を借りて、アルティナは身軽な動作で馬車に乗り込んだ。
護衛がそれぞれの配置につき、ゆっくりと馬車が動き始める。
できるだけ快適に過ごすことができるようにと侍女たちが気を配ってくれた馬車の中は、たくさんのクッションが置かれていた。
「お帰りをお待ちしております」
「えぇ――デイン。留守をお願いするわ」
不安をはらんだ目の色を隠せずにいるアルティナに、見送りにきた家臣たちは一様に悲痛な視線を向けた。
ディレイニー王国は、強大だ。国王のライオールは無慈悲な人間だという。ライディーア王国の兵士たちは、彼自ら指揮する軍に歯が立たなかった。
そこへわずかな供だけを連れて、乗り込もうというのだ。若い女性の身で恐ろしくないはずはない。
黒一色に身を包んだアルティナは、今にも倒れてしまいそうに見えた。黒いベールで顔を隠しているから、表情はすぐ側に近づいた者にしかわからない。
ルドヴィクが手を差し出す。その手を借りて、アルティナは身軽な動作で馬車に乗り込んだ。
護衛がそれぞれの配置につき、ゆっくりと馬車が動き始める。
できるだけ快適に過ごすことができるようにと侍女たちが気を配ってくれた馬車の中は、たくさんのクッションが置かれていた。