銀棺の一角獣
再びの旅立ち
 キーランを見送って、アルティナは大きく息をついた。髪にまだ彼の手の感触が残っているような気がする。彼の手は、それほど大きいというわけではなかったけれど、優しかった。


「アルティナ様」


 デインがそっとアルティナを呼ぶ。


「お発ちになりますか」

「すぐにでも」


 アルティナは唇を引き結んだ。それからティレルのいる四阿へと向かう。


「ティレル」


 朝のさわやかな空気の中、一角獣はたいそうご機嫌だった。彼の周囲には、果物の食べかすが散乱している。

 庭園内の泉で水浴びをした彼の毛並みはつやつやとしていた。銀の尾は眩しいほどにきらきらと輝いている。


「果物は十分だった?」

「十分以上だ。種類も豊富だったしな」


 城中の食糧倉庫からかき集め、果樹園から収穫し――と、女王の信頼する一角獣のために城中の者たちが一生懸命になったのだろう。

 彼はきっといらないといったのだろうが、馬用の毛布も四阿に運び込まれているのが目に入る。
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