銀棺の一角獣
「おまえの面倒まで見る必要はなくなったからな」

「まあ、失礼ね! 自分のことくらい自分でできるわ!」


 憤慨するアルティナに対して、ティレルは笑った。


「本当にそうかな? 城までの旅の間、ずっと彼に頼りきりだっただろうが」

「……それは、そうかもしれないけれど」


 城へ戻るまでの間、身の回りのことはほぼ全てルドヴィクがやってくれた。夜間の見張りはキーランも負担してくれた。

 たしかに慣れない旅はきつかったけれど、それでもアルティナの負担は一番少なかったのは事実だ。


「リンドロウムの森までどのくらいかかるのかしら」

「できるだけ急ぐさ」


 話題を変えたアルティナが、それ以上触れてほしくないのはわかったのだろう。ティレルは軽い口調で返してくれた。


「……あなたの角、昨日よりのびた?」

「力が戻ってきたからだろう。昨日の果物がうまかったからな。特に林檎がよかった」

「全てが終わったら、王宮の果樹園に実っている林檎全てを食べ尽くしてもかまわないわ」

「それは豪勢な話だな」
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