銀棺の一角獣
 柔らかなパンに、野菜たっぷりのシチューが疲れ切った身体を温めてくれた。騎士たちは交替で見張りに立つようだったが、アルティナは言われる前にベッドに潜り込んだ。

 今夜ばかりはティレルも文句一つ言わず、馬としての扱いを甘んじて受け入れているようだ。馬小屋におとなしく入った彼は、最後にアルティナに向かって振り返り、片目を閉じて見せたのを思い出してベッドに横になったアルティナはくすりと笑う。


「……早く眠らないと」


 明日の朝は、また早くに立たなければならない。早く眠らなくては。アルティナは目を閉じて、眠気がやってくるのを待った。


□■□ ■□■ □■□


「アルティナ様!」


 低い声がかけられる。同時に激しく揺さぶられて、アルティナは飛び上がった。自分がどこにいるのか、理解することができなくて目をぱちぱちさせる。


「あ……あなたが、なぜ、ここに?」


 彼女を抱え込むようにしているのはルドヴィクだった。窓の外に目を向けるがまだ真っ暗で、出立の時間にはまだまだありそうだ。
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