銀棺の一角獣
「向こう側に降りてください。降りたら、身体を低くして」


 言われるままにアルティナは外に滑り出た。平屋の建物だから、すぐに地面に足がつく。身体を低くして待っていると、すぐにルドヴィクが続いて出てきた。


「……厩に」


 アルティナを先導して、彼は厩に向かう。暗闇の中、彼の足取りに迷いはなかった。


「アルティナ様――ご無事でしたか」


 ひそひそとミラールがささやく。


「何があったの?」

「話は後です」


 厩の馬たちは、馬具をつけた状態で待ちかまえていた。ティレルも。


「この村の奴らはなってない」


 ティレルは機嫌が悪かった。


「――お前を売り渡すつもりらしいな、アルティナ」

「売り渡す?」


 今はすっかり慣れた動作で、アルティナはティレルにまたがる。


「そうさ。ライオールはお前を差し出せば、たっぷりと金を払う――と村長に言ったらしい」

「……手が回っているとは思わなかったわ」
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