銀棺の一角獣
 アルティナは小声で言った。その間に、騎士たちも次々と馬上の人となる。


「――おい、ミラール」


 ティレルは尾を振った。


「お前が先に行け。アルティナはその後だ――いいな」

「かしこまりました、ティレル殿」


 真っ先にミラールが飛び出した。


「身を伏せておけ!」


 走り出しながらティレルが言う。どちらにしても彼に頼るしかないから、アルティナは鞍の上に倒れ込んだ。

 周囲は真っ暗だが、ティレルはいつもと変わらず走り続けていた。アルティナは馬上に伏せたまま、そっと目線だけを上にあげる。

 ミラールが乗る馬の尻だけが目に入る。


「伏せていろと言っただろうが」


 ティレルの声に、慌ててまた鞍に顔を張り付けた。


「応戦します!」


 ルドヴィクの声が後方から響いてくる。アルティナが声をかけようとした時――後方から矢が飛んでくる。こちら側からも矢を射かけるのがアルティナにもわかった。
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