銀棺の一角獣
 今は大仰な鎧は身につけていない。茶の地味な上着と同じ色のズボン。防寒着も兼ねているマントは黒に近い濃い茶色だ。

 その中で、髪を束ねるのに使っている赤い紐だけが鮮やかにアルティナの目を打つ。


「……彼を巻き込むのではなかったわ」


 本当に大切なら――一緒に連れてくるべきではなかった。彼の手を放してあげて、彼の幸せを遠くから祈るべきだったのに。


「そう言ってやるな。お前と離れて、あいつが幸せなはずないだろう? どんな形でも、お前の側にいることができればいいんだ、あいつは。お前が幸せならもっといい」

「……彼がそう言うこともわかってるわ」


 ふぅ、とアルティナはため息をついた。他に考えなければならないことは山ほどある。
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