銀棺の一角獣
 夜着の上から肩掛けを羽織ってアルティナはテラスに続く窓を開いた。柔らかな室内履きの足を踏み出して、テラスへと出る。

 夜風は冷たかった。綺麗に洗った銀の髪が乱されて、アルティナは片手で髪を束ねるようにして手すりにもたれかかった。

 今夜は月が眩しくて、周囲の様子がよく見える。見下ろすと、護衛についてきた騎士たちが二名、立っているのが見えた。

「……アルティナ様」


 下から遠慮がちな声がする。そっと手を振ると、ルドヴィクは首を横に振る。

 夜着で外に出るな、身体を冷やすな――彼が言いたいのはどちらだろう。もう一人は上を見上げようとはしなかった。

 眉を寄せたルドヴィクから、アルティナは視線を外すことができなかった。

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