銀棺の一角獣
「……お加減はいかがですか? キーラン殿下」

「キツイね。思っていたより――キツイ」


 身体を鎖で巻かれたまま、キーランは寝台の上でもがく。ジャファールが手を貸して、彼は起き上がった。そしてジャファールの手に、彼は握りしめていた短剣を押しつけた。


「……自分の心が黒く染まっていくのが見えるような気がするよ」


 声に疲労感が如実にあらわれているとキーランは思った。


「申し訳ございません」


 ジャファールは丁寧に頭を下げる。


「いや、それはいいんだ。これで父上をお救いすることができるならね」


 汗をかいているキーランの身体には、白の装束がべたべたと張り付いている。


「『魂鎮の儀』――か」


 ジャファールが鎖を解くのを眺めながら、キーランはつぶやく。


「本当、思っていたよりキツイよ。アルティナたちが早く戻ってくれることを期待しなくちゃ」
< 180 / 381 >

この作品をシェア

pagetop