銀棺の一角獣
 音をたてて、鎖が床の上に落ちる。自由になった感覚を楽しむように、キーランは立ち上がって身体を動かした。


「薬湯をどうぞ」


「ありがとう。でも僕、これ嫌いなんだよね。蜂蜜入りだし、子どもになった気がするよ」


 軽口をたたきながら、キーランはジャファールとは別の神官が差し出した薬湯を受け取る。


「お飲みください。お身体には大変な負担がかかっているのですから――お心にも」


 ほどよい温度で運ばれてきた薬湯を、キーランは立ったまま喉に流し込む。

 火を消したり、室内の空気を浄化する香を炊いたりと後かたづけをしていた神官たちはいつの間にか姿を消していた。


「大変だけど、できるだけのことはするよ――儀式はまた明日も続くんだろう? 沐浴場を借りるよ」


 薬湯の器を返したキーランはジャファールを従えてその部屋を出る。
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