銀棺の一角獣
 神殿内に彼が与えられたのは、アルティナたち王族が滞在する部屋。つまりはこの神殿の中で一番いい部屋だった。

 神官たちの使う部屋は必要最低限のものしか置かれていないがここは違う。

 寝具は王宮の物とひけをとらないほど上質な品が用意されているし、身の回りの世話は若い神官たちが行ってくれる。

 沐浴場で身体を清め、柔らかな室内着一枚で部屋に戻れば、清潔な衣類が一揃い用意されている――神官服ではあるが。

 神殿に滞在する間は、どれほど身分が高い者であっても神官たちと同じ格好で過ごすことが求められる。

 先にそれを聞かされていたし、遊びに来ているのではないから、キーランに不満はなかった。


「……本当、キツイ。これくらいでキツイなんて言うのもアルティナたちに申し訳ないんだけどさ」
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