銀棺の一角獣
 キーランの言葉に、室内にいた神官は応えようとはしなかった。キーランが椅子の背に無造作にかけたタオルを取り上げ、一礼して部屋を出ていく。

 それを目で追って、キーランはベッドに倒れ込んだ。

 身体が重い。

 日々、身体に蓄積する疲労が増えているような気がする。
 

 儀式の間、彼の身体は魔を寄せ付けないように銀の鎖で守られる――万が一、彼の心が暴走した時に身体を拘束しておくためでもあると聞かされていた。

 鎖で縛られ、石造りの寝台に横になって神官たちが呪文を詠唱するのを聞いているうちに、彼の心は身体を離れていく。

 彼の心が流れ着くのは、父のいる母国。彼の目には、父の周囲を黒いもやのような物が取り囲んでいるのが見える。
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