銀棺の一角獣
 血に汚れた彼の服を取り上げ、川の水でできる限り汚れを落とす。裁縫道具があれば、繕うこともできるのだろうけれど、あいにくと持ち合わせがない。

 近くの岩場にそれを広げて乾くのを待つ。人一人が入れるほどの距離をあけて、彼の隣に座った。


「……少し休んだら行きましょう」

「……あなたは、大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。この程度の怪我、しょっちゅうですから」


 ルドヴィクは、アルティナの方には顔を向けずに言った。アルティナは彼の横顔を見つめる。自分でしたことだけれど、人一人分の空間が恨めしかった。

 走っている間、彼はずっとアルティナにおおい被さるようにしてくれていた。矢がアルティナに刺さらなかったのは、彼がかばってくれていたからだ。

 彼に傷を負わせてしまったことが申し訳なくて、どうしたらいいかわからなくなる。
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