銀棺の一角獣
「……ルドヴィク!」
押し殺した声は低かった。
「どうやって、ここに?」
「よじ登って」
「……まあ」
単純な彼の言葉に、思わず目を丸くする。
「……一緒に見張っている人は? こんなところに来てはいけないのではないの?」
かすかに、彼は笑った。
「今日の見張りは、しばらく席を外してくれるそうですよ」
「……それは困るわ」
アルティナは彼から視線をそらせる。そうすれば、この気まずい雰囲気をどうにかできるのではないかと期待した。
「アルティナ様」
低い声で名前を呼ばれたと思ったら、彼の腕の中に閉じこめられていた。
「――このまま、あなたを――」
できることなら連れ去りたい。熱っぽい声で、彼はそうささやいた。
「ルドヴィク……ルドヴィク……!」
彼の腕に背中を回して、アルティナは同じように熱のこもった声で彼に返す。
ディレイニー王国になんて行きたくない。その気持ちは変わらないけれど――抱擁から先に身をほどいたのはアルティナだった。