銀棺の一角獣
「……ティレル?」


 アルティナは不安に震える声で呼びかける。そのままティレルはアルティナに背を向けたままだった。

 アルティナはティレルの詠唱に耳を傾ける。見つめていると、アルティナにも見えてきた。湖の表現がわずかに波立っている。

 それから、湖の中から銀色に輝く剣が現れてきた。


「アルティナ、それを手に取れ」


 ティレルに言われるままに、アルティナは湖の中に足を進める。水はそれほど深くはなかった。ひんやりとした水の感触が心地いい。どこまでも湖の水は澄んでいた。下を見れば小魚がうろうろとしているのが見える。

 手にした剣はずしりと重かった。アルティナはそれを手にする。
 ティレルはアルティナの腰のあたりをつついた。


「頼みがある」

「……何かしら?」


 ティレルとアルティナは水に足をひたしたまま見つめ合った。ティレルは言う。
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