銀棺の一角獣
「どうして、そんな風に変化したの……?」

「……さてな」


 ティレルの顔に浮かんだ表情は苦かった。その苦さがアルティナの胸に流れ込んできて、そして胸を締め付ける。


「だから、俺もお前達も持ちつ持たれつ、なのさ。俺はあいつを――助けてやらなければならない。あいつが人間を喰らってしまう前に」

「……切ったら……痛いのかしら?」

「多分な」

「あなたに痛い思いをさせるのは申し訳ないわ……」


 そう言いながら、アルティナは剣を鞘から抜いた。重みに身体がよろめく。鞘を水の中に放り出した。


「……でも、やるわ。あなたがそれが必要だと言うのなら」

「アルティナ……俺を切ったらすぐに元来た道を戻ってルドヴィクのところへ行け。彼は野営の準備をしている。俺の再生には一晩かかる。明日にはお前達に合流できると思う。森から出るな――俺が戻るまで待て」

「……わかったわ」


 アルティナはうなずいた。深呼吸して、剣を振り上げる。
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