銀棺の一角獣
「目を閉じるな。他の場所に当たったら、もう一度やるはめになるんだぞ。首をねらって、切り落とすつもりでやれ」


 振り上げた手が震える。それでもアルティナはやめようとはしなかった。足の位置を変えると、ばしゃりと水が跳ねる。


「……本当に……いいのね……?」

「やれ」


 ティレルはアルティナの前に膝をつく。彼女が切りやすいように。
 言われたように、目を閉じるのはやめた。

 振り下ろした剣は、確実にティレルの首を捉えていた。嫌な手応えがあって、銀が赤に染まり、水の中に崩れていく光景がアルティナの目に広がる。


「……ティレル……」


 明日の朝には、生き生きとした姿で戻ってくると言っても、目の前にあるのは紛れもなく一角獣の死体だった。

 ティレルの頬に口付けて、アルティナは鞘を拾う。血に汚れた刃を湖の水で洗って、着ていた服の裾で丹念に拭った。


「これはどうしたらいいのかしら……」


 アルティナのつぶやきに、どこからか持って行けばいいとささやく声がする。アルティナは周囲を見回した。
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