銀棺の一角獣
「あなたと共に人生を歩みたかった。誰と結婚しても、私の心はあなたのもの――だから――」
アルティナが言外ににじませた言葉を、ルドヴィクは悟ったようだった。アルティナの身体に回していた腕をほどいて、膝をついた姿勢を取る。
「……ルドヴィク。あなたは、もう行ってちょうだい」
アルティナは彼に右手を差し出した。彼はその手を取って、そっと唇を押しあてる。
「……お幸せに――」
「……ありがとう」
幸せになんてなれるはずがない。アルティナの幸せは――彼とともに。
それでも微笑みを作って、アルティナは彼が身軽な動作でよじ登ってきた柱を滑り降りるのを見送った。
明日には、ライオール王と対面することになる。
眠ることなんてできそうにないけれど。それでも少しでもいいから眠ることにしよう。