銀棺の一角獣
 都の賑わいに、アルティナ達の帰城を知ったのだろう。ジャファールは神殿の前に出て待っていた。


「お帰りをお待ちしておりました」


 丁寧に頭を下げて、ジャファールはアルティナたちを神殿の中へと招き入れる。


「キーランは?」

「……だいぶ衰弱しておいでで――ここ数日はベッドから起きあがることもできないのです……それでも儀式だけは、と」


 アルティナは、その言葉に胸が締め付けられるような気がした。ルドヴィクがそっとアルティナの背を押す。


「アルティナ様」


 彼のその言葉だけで、アルティナにはわかった。彼は、アルティナがキーランの側に行くことを望んでいる。


「……お会いできるかしら」


 ジャファールは無言で扉を開いた。ルドヴィクはその場に残り、アルティナだけがその部屋に入室する。

 神官達と同じ服を身につけたキーランは、ベッドに横になっていた。かすかに唇を開き、苦しげに胸が上下している。
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