銀棺の一角獣
「……ねえ、これからはわたしはどうすればいいの? わたしは何かできるの?」


 アルティナは剣をふるう腕を持たない。代々の王の記憶も、もう役にはたたない――自分の血の中に潜む代々の王の力も提供した。これから先何ができるのだろう。


「おまえにできることならまだあるさ――キーランはしばらく休ませてやれ。少なくともしばらくの間は」


 ティレルは立ち尽くすアルティナに身をすり寄せる。


「おまえには軍の先頭に立ってもらう――せいぜい美しく装え」

「美しくって――」

「大丈夫だ。城内の美術室に鎧があるはずだ――俺の記憶に間違いがなければな」

「美術室の鎧……」


 アルティナは記憶を蘇らせようと目を閉じる。美術室にはめったに足を踏み入れることはなかった。

 並んだ代々の国王の肖像画に睨まれているような気がして、怖かったから。両側にずらりと並んだ国王や王族たちの鎧の中に確かに一つ。緩やかに女性的な形を描いている鎧があったのを思い出す。
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