銀棺の一角獣
「いつか――髪をまとめる飾り紐をあげたでしょう……?」


 ルドヴィクはうなずいた。


「あれを使って……ほしいの。まだ持っていてくれるのなら……無理にとは言えないけれど」


 小さく彼は笑った。


「持っていますよ。肌身離さず」

「一度も使ってくれたことはなかった」


 思わず不満顔になったアルティナは唇を尖らせた。


「使えるはずないでしょう。あなたからいただいたものを使えるはずなんてない。ずっとここに……しまっておきました」


 ルドヴィクは胸に手を当てる。アルティナの唇が震えた。それだけで胸がいっぱいだ。


「……アルティナ様」


 しなやかな仕草で、ルドヴィクは膝をついた。アルティナの手をとって、そこに口づける。

 彼の唇の感覚に、アルティナの背中を喜びが走り抜ける。何度も口づけあった――その時のことを思い返して。
< 247 / 381 >

この作品をシェア

pagetop