銀棺の一角獣
 髪の上半分だけを編み込みながら後頭部でまとめる。そこには髪飾りは差さないで、かわりに庭で摘んできた生花が何本も差し込まれた。

 支度を終えたアルティナが立ち上がると、ドレスの裾がふわりと揺れる。この上から鎧を着用しなければ、舞踏会に出てもおかしくない出で立ちだった。


「――鎧を」


 両手を横に広げてアルティナは命じた。鎧が着せつけられ、留め金で固定される。滅多にこんなに重い物を身につけることはなくて、アルティナは思わずため息をついた。


「……行きます。あなたたちは、最悪の場合脱出できるように準備しておきなさい。無理にこの場に残ろうとはしないこと。いいですね?」


 今までよく仕えてくれたと礼を述べたその時、アルティナの部屋の扉が叩かれた。
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