銀棺の一角獣
 いつもの軽い口調ではなく、ゆっくり、重々しく話す彼は、アルティナの前までたどり着くと頭を下げた。その額に生えた角に、アルティナはそっと手を触れる。


「そろそろ、だな」


 彼の言葉に、その場の空気が緊張する。


「乗れ――馬具も磨き上げてもらった。大丈夫だな?」

「ええ」


 すかさずルドヴィクが膝をつくと、自分の手を差し出した。ティレルは足を折ってアルティナが乗りやすいようにする。

 ルドヴィクの手に足が包まれたのは一瞬だった。次の瞬間、アルティナはティレルの背中にいた――初めて身につけた鎧も、重くはなかった。

 同じようにルドヴィクが乗るべき馬も美々しく飾りたてられている。鞍にも金と銀があしらわれていて、遠くからでもよく目立った。どこから調達してきたのか、馬にかけられた布は、燃えるような赤だった。
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