銀棺の一角獣
 伝説の一角獣の背を借りたアルティナの前を、ルドヴィクがいく。王宮から都を囲む城壁までの間、民たちは遠巻きにアルティナたちの後をついてきていた。


「女王様!」

「アルティナ様!」


 口々に彼らはアルティナの名を呼ぶ。


「ルドヴィク様!」

「アルティナ様をお守りください!」


 同じようにルドヴィクの名も何度も呼ばれた。

 二人が通り過ぎてから、キーランを乗せた輿がいく。担いでいるのは若手の神官たちだった。一様に沈痛な面もちで、彼らはひたすらに先を急ぐ。

 敵国の王子でありながら、キーランに対する罵声はほとんどなかった。この戦いは、両国の争いと言うだけではなく――魔を封じなければ人の側に勝ち目はないこと。

 キーランがそのために自分の命をかけて儀式に臨んだことは誰からともなく、広められていた。

 彼の神官長の正装は煌びやかだったけれど、ぐったりと輿に揺られている彼が普通の状態ではないことくらい見ればすぐにわかる。

 涙もろい人たちが真っ先に鼻をすすり、神官たちに負けないほどの空気が重い彼らを包んだ。
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