銀棺の一角獣
長い銀の髪を長々となびかせ、ドレスと鎧を身につけた娘がライディーア国内に何人もいるなんて彼らが考えるとも思えなかった。


「矢が飛んでくるぞ」

「当たらないわ」


 自信満々の口調でアルティナは返す。それから横目でティレルを眺めた。


「だってあなたが一緒なんだもの。わたしに傷を負わせるような真似、するはずないでしょう?」

「堂々としていると思ったらそれが理由か」


 喉の奥でティレルは笑った。アルティナは彼の背に手を置いて、出撃していく兵士たちを見送る。


「いいえ、堂々としているわけではないわ。堂々としているように見せたいの――だって、ここから彼らを見つめることしかできないから」


 それ以上はティレルも何も言わなかった。ただ、アルティナに寄り添うようにして静かに両軍がぶつかる様を眺めている。
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