銀棺の一角獣
 ぎくしゃくとした仕草で、アルティナはキーランに近づいた。


 胸から流れる鮮血が、彼の着ている神官服を汚す。黒の神官服にじんだ血はどんどん広がっていって、刺繍の金糸をどす黒い赤に染めていった。


「キーラン様! キーラン様!」


 アルティナは彼を揺さぶって名を呼びつつける。こんなことをさせるために、彼をここまで連れてきたわけじゃなかった。

 彼と歩む未来はアルティナの望んだものではなかったけれど――それでも、アルティナは彼のことが嫌いではなかった。

 控えめな微笑みも、遠慮がちに抱きしめる腕も、嫌いではなく、むしろアルティナにとっては好ましいもので。
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