銀棺の一角獣
 強引に押しつけられた結婚ではあるけれど、憎める相手ではなかった。

 父にとり憑いた魔の器であり――自分の国から離れてこの国に来て、アルティナたちとは別だったけれど、彼の戦いに身を投じてくれた。
 
 だからこそ彼にはこれ以上の負担はかけたくなかったのに――流れ落ちる涙が、キーランの頬を濡らす。けれど、キーランは目を開こうとはしなかった。


「キーランの作戦勝ちだな。ライオールが動揺している」


 ティレルの声は冷たくアルティナに響いた。顔を上げたアルティナは、ティレルを睨みつけた。


「ほら、ルドヴィクが行くぞ――」


 アルティナの目には、残り少なくなった騎士たちが陣を突破しようとしているのがうつる。


「ティレル!」


 何も考えられなかった。アルティナはキーランの手にある短刀を強引に奪い取る。
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