銀棺の一角獣
 どうしてそんなことをしたのか、アルティナにもわからなかった。

 ただ、そうすべきだと思ったから――口から出てくる言葉も、アルティナ自身のものではないのかもしれなかった。


「楽しい? 人を貪るのは。戦争を起こして、たくさんの人を殺して――あなたは楽しいかもしれないけれど、それはわたし達の世界には必要のないことなの」


 アルティナは持っていた短剣を彼の方へ突き出した。彼を指すことができるなんて思っていない。何かに突き動かされるように、ただ彼の方へと差し出した。


「――これが、キーラン様の血よ。満足? これがあなたの望んだこと?」

「――違う――息子は――キーランは」


 動揺したライオールの声が震えた。ルドヴィクのことなど忘れ去ったように、アルティナを見つめている。
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