銀棺の一角獣
 重い沈黙がその場を包んでいた。その沈黙を破ったのはティレルだった。


「ルドヴィク! 切れ!」


 ティレルの声にルドヴィクは素早く反応した。ライオールの首のあたりで剣を横に一閃させる。

 彼の喉から血が噴き出すのを、アルティナは呆然と眺めていた。つい先ほど見たのとよく似た光景。

 声が出なくて、そのまま数歩後ろに下がると腰を落としてしまった。

 ――違う。

 キーランの胸から噴き出していたのは、赤い血だった。ライオールの首から流れ出ているのは血ではなく、黒いもやのようなもの。

 ティレルが倒れ伏したライオールに近づくと、角でライオールの傷口に触れた。それと同時に黒いもやが彼の角に吸い込まれていき、喉の傷が塞がっていく。


「……ライオール王」


 ティレルがライオールの名を呼んだ。アルティナは半分よろめきながら何とか立ち上がり、ライオールの方へ歩み寄る。
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