銀棺の一角獣
 アルティナが彼の顔をうかがえる場所まで近づいた時、彼の瞳が薄く開くのが見えた。


「……何があった?」


 ようやく聞こえた彼の声は、アルティナの知っているものとは異なっていた。こうして口をきいている姿を見ても、恐ろしさなどまるで感じない。

 以前に顔を合わせた時よりも十歳以上老け込んだように見えた。


「つらいか? そうだな、つらいだろうな」


 ティレルはアルティナには見向きもしなかった。膝を折ってライオールに顔を寄せ、話し続けている。


「千年もの間、魔を封じてくれたことを感謝する。とはいえ――払った犠牲は大きかったな――記憶はあるのだろう?」

「……何となくは」


 ライオールは地面に座り込んだ。鎧が重そうに、アルティナの目にはうつる。


「……キーラン」
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