銀棺の一角獣
「まだしばらくはいる――何しろ林檎がうまいからなあ」

「林檎がなくなったら行ってしまうというの?」


 ティレルはアルティナの手に乗せられているケーキを器用にすくい取った。


「林檎がなくなっても、この国にはうまいものがたくさんある。それに侍女も美人だ」

「――あなたって、意外に世俗的よね」


 銀の棺におさめられていた一角獣ならば、もっと神聖な性格の持ち主だと思っていたのに。


「意外に、とはなんだ。世俗的、とは何だ」


 不満そうにティレルは鼻を鳴らした。


「俺は自分の好きなように生きているだけだ。文句はあるまい?」

「文句があるわけではないのだけれど」


 アルティナは手を伸ばして、ティレルを撫でる。


「いつまでもあなたにいてほしいわ」

「永遠には無理だ――だが、まだしばらくの間は」
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