銀棺の一角獣
 アルティナは小声で答えた。ライディーア王国は先の戦争で多くの人材を失った。国の建て直しに三年かかった。宰相のデインが力を貸してくれてはいるけれど、まだ完全とは言えない。


「忙しいんだね――僕にできることある?」

「たくさんの援助をいただいていますもの。これ以上は必要ありませんわ。自分たちの足で立つことも覚えなければ」

「……自分たちの足で立てそう?」

「ええ、大丈夫です」


 この三年の間、ディレイニー王国からは多額の援助を受けている。技術者を何人も派遣してもらい、ライディーア国内の人材の育成にも協力してもらった。

 十分、協力してもらっている。


「ティレルは?」

「彼も変わらないわ。一日二回入浴するの。彼の石鹸代だけでも、大きな出費だわ」
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