銀棺の一角獣
 その言葉にくすくすとキーランは笑った。

 ティレルはいまだにライディーア王宮内にとどまっている。

 一日二回、入浴なり水浴びなりをさせてもらっているのだが、彼の側につくことができるのは若くて綺麗な侍女に限られていた。

 この三年の間に、十人ほどが入れ替わり立ち替わり彼の世話についたのだが、王宮を下がった後も一角獣の世話をしたということは彼女たちの自慢になっているらしい。

 伝説の一角獣の真実が世の中に広まりすぎるのもどうかと、アルティナは思わないわけではなかったのだけれど――森に帰った時に、彼が森での生活に順応できるかどうかはアルティナの関知するところではないので好きなようにさせていた。


「キーラン、悪かったな。思ったより時間がかかった」
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