銀棺の一角獣
「そう……ですね。娘を送り出したいという者がいれば、ぜひ」


 ディレイニー国の王妃付きの侍女を勤めたとなれば、娘の経歴に花を添えることになるだろう。こちらに戻ってきた後、アルティナの宮廷に仕えてもらってもいい。

 もし、ディレイニー貴族に見初められて縁談の話が出るようならばそれはそれでかまわない。両国の絆が強くなったという証なのだから。


「頼むよ。君の親戚がいれば、一番よかったんだけど……」

「残念ですわ。外に出せる年頃の娘が一人もいなくて――」


 先の戦争で、主だった王族男子は大半が死去している。

 今、アルティナに何かあった場合には従姉妹のエミーリア王女が跡を継ぐことになるだろうが、彼女はまだ十歳だし、王位継承権に一番近いところにいるので、外国に出すわけにはいかないのだ。
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