銀棺の一角獣
 緩やかに広がったドレスの後ろで、彼の手がアルティナの手を探り当てる。そうして指を絡め合った。

 互いを見つめる彼らの視線に、広間に居合わせた者大半が気づいていた。

 アルティナにどれだけ縁談を勧めても、首を縦に振らないのはルドヴィクがいるから。

 それなのに、まったく話が進まないのはルドヴィクの方もアルティナに接近しようとはしなかったから。

 二人きりになっても、ルドヴィクはアルティナの手を握る以上のことはしなかった――抱きしめることさえない。

 時には、それが物足りないとアルティナは思うこともある。けれど、国を立て直すのが先だとずっと自制してきた。

 先ほどのキーランとの会話が思い出される。
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