銀棺の一角獣
 言わなければならないことはたくさんあるはずなのに、うまく言葉が出てきてくれない。アルティナは唇を噛んだ。


「ルドヴィク……あのね……」


 民の前で演説することにはずいぶん慣れたはずなのに、言葉が自由にならない。彼への感謝の念と、想いをどうやったら伝えることができるだろう。

 呼びかけたくせに、口を閉じてもぞもぞしているアルティナを不思議そうな目でルドヴィクは見つめていた。

 今夜は月がまぶしいくらいだ。彼の髪は、月の光の中でいつもとは少し色が違って見える。アルティナの髪は、いつもよりいっそう白々として見えた。


「……アルティナ様」


 何かを感じ取ったかのように、呼びかける彼の声がわずかに震えた。

「お願いがあるの……目を閉じてくれる?」
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