銀棺の一角獣
「……限界でした」


 アルティナの髪に唇をあて、頬へと滑らせながらルドヴィクは言った。


「限界?」


 彼の腕に身を任せ、唇の感覚に酔いしれながらアルティナは返す。


「限界ですとも。この一年、毎日今日こそはあなたをさらって逃げてしまおうと――お側にいられるだけで、満足しなければならないのに」

「そんなこと……ごめんなさい。わたしがはっきりしなかったから」

「もう、我慢しなくても……いいですか?」


 アルティナの耳に唇を寄せてルドヴィクがささやく。アルティナの返事は決まっていた。

「朝まで――いえ、これから先も永遠にあなたの側を離れません。今後何があっても、あなたの選ぶ道が――地獄に続こうとも」


 それは、銀の棺を引き渡すと決めた日のアルティナの決意でもあった。
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