銀棺の一角獣
 国を守る神を敵国に引き渡すと決めたあの日。自身は地獄に堕ちようとも、どんな手を使ってでも国を守ると決めた。

 あの日、棺を渡すと決めなかったらどうなっていたのだろう。彼が側にいてくれたから、恐ろしさも不安も半減して、何が待っているのかわからない国へ向かうことができた。

 返事の代わりにアルティナは彼の胸に顔を埋める。これ以上の言葉はいらなかった。

 広間に戻った時には、キーランは退室した後だった。アルティナはそのままルドヴィクを伴って退出する。

 ほったらかしにしてしまったキーランには申し訳なかったけれど、それは後日改めて詫びるしかない。

 アルティナの寝室にルドヴィクが足を踏み入れたのは、初めてのことだった。
< 343 / 381 >

この作品をシェア

pagetop